甘辛スパイシー

どこにでもいる20代の男が大都会”TOKYO”での生活を綴ります。

僕たちは蟻なのかもしれない

 僕は営業職として働いている。

来週発表される人事異動に実はびくびくしている1人でもある。

そんなことはどうでもよくて、お客さんが放った一言で頭から離れないものがある。

 

 

「今の人生のゴールが見つからない」

彼は初めて会うお客さんだった。

担当している取引先の、普段商売をさせてもらっている支店とは別の支店の方。

商売の話をしにきたはずなのに雑談に花が咲く。

 

彼は陰謀論の類の話が好きで、やりすぎコージーフリーメイソン・なんとかかんとか協会(カタカナ名だった気はする)などなどたくさん語ってくれた。

 

裏の世界のことを知らないと、いつか決断を迫られた時に〈権力者〉の思うつぼになってしまう。

ただ、そのような裏の世界の事情を調べたところで今こうして生活している自分の人生はどうにもならないと感じている。オグリキャップみたいな存在は本当に稀で、良い両親の下に生まれなければ良い人生は送れない。大企業に勤めている人の大半は裕福な家庭で、自分みたいな家系の出は中小企業で働き華々しい生活とは遠い生活を送らなければならない。そして、おそらく自分の子供も同じ生活を送るのであろう。

 

今の人生にゴールが見えない。高校卒業から働き始めて20年以上は経っている。家庭を持ち、それなりに出世もしてきた。けど、自分たちの世界より上の世界にいる人たちはたくさんいる。それは陰謀論に出てくるような権力者ではなく、同じ業界内の大企業の人間であったり仕入先であったり。自分たちはいつまでたっても駒でしかなく、きっと今の人生で『あがり』はないんだろう。

 

 

昼間からなんて暗い話なんだろうとは正直思ってしまった。

けどそれを明るく話す彼が、これをそれほどまでに重い話に感じさせなかった。

 

 

僕たちは蟻なのかもしれない

帰りの電車の中で彼との話を思い返していた。

全然仕事の話をしていなくて、課長になんの成果があったのかと聞かれたら困るな~なんて考えていた。

 

”人生のゴール”なんてものは別に規定されていない。

寿命が尽きたらそれはそれでゴールだけど、この場合はそういうことではなくて”何かを成し遂げる”とか、そういう類のもの。

僕は今25歳、社会人2年目。これからの人生なんて全く分からない。たぶんこのまま過ごしていけばこのままの雰囲気の人生だし、何かを劇的に変えればこの先の人生も変わるのかもしれない。

 

好きな本の一つに中島らもの『ガダラの豚』がある。そこでバキリという呪術師が『人間は蟻だ』というような発言をする。

社会の変革とか大きいこと成し遂げたり発明したりとかしてるようにみえても、結局は社会全体の大きな『掟』に従っているだけである。蟻が蟻塚のなかでこじんまり生活をおくっているように。

みたいな趣旨だったと思う。(おぼろげ)

 

悲観的に見れば、そうなんだろうな。

生まれたら、あとは死ぬだけって言えばそうだろうし。

人生経験な中で楽しいことは当然あると思う。彼も家庭を持ち、その点は悩みも尽きないが楽しそうに感じ取れた。

しかし、それ以上に人生の閉塞感を彼は感じ取ったのではないかと思う。

 

なんとなく彼の言うことは分かる。

まだ僕は25歳だし、まだまだこれからの人生だと思う。(というより信じている)

何かを思いっきり変えれば人生も変わると思う。

けど、いつかは彼みたいな閉塞感に悩まされるのかもしれない。

 

とりあえず今は異動発表に怯えている。

結果次第では僕の人生も変わっていくのかな??